今回は素数に関してどういうことを考えなければならないかというのを実際の入試問題を使って説明します。
素数についてはこの記事を読めば95%以上の問題は必ず解けるようになります。少なくとも合格点は取れるようになるので、数学が出来るようになりたい人は必ず最後まで読んでください。
まずは京大の入試問題でどういうことを考えればいいのかということを実際の入試問題を使って説明していこうと思います。
2018年の京大文理共通問題
\(n^3-7n+9\)が素数となるような\(n\)を全て求めよ
という問題です。
問題を見てまず考えること
この問題に限らず、数学が得意になるためには問題を見た時点である程度何をするのか考えられるようにならなければなりません。
つまり、例えば今回は「素数になる条件を求める問題」と言われた時点で今まで解いたことのある問題で似たような問題というのを想像して、その時にどんな解法を用いたのかということを考えられるようにならなければならないのです。
もちろん最初の段階でいきなり正解の解法を思いつけるようになるには相当な経験がないといけません。
しかし、「こういうことをすればいいんじゃないかな」っていう選択肢をいくつか浮かべてその中に正解があれば色々試しているうちに解けるでしょう。
素数になる条件で考えるべきこと
今回は素数というのがテーマの問題です。京大の2次試験の整数問題では素数が頻出なので、素数と言われて考えられることを増やしておいて欲しいと思います。そのためには素数の性質を考えなければなりません。よく使うものから考えていくのがいいでしょう。
素数はほぼ奇数
これは医学部で「この病気の1stチョイスの薬はなになにだ」などと覚えるの似ていると思います。素数ときいてまず思い浮かばなければならないのはほぼ奇数であるということです。
次にこれをこの問題に当てはめるということをします。
どういうことかというと、\(n^3-7n+9\)が偶数となるような\(n\)があったとすればそれは除外することが出来るわけです。(もちろん2になる場合は除外できませんが)
なので\(n^3-7n+9\)がどういう時に偶数になるのかっていうのをまずは考えます。
こういう式が偶数になるか奇数になるかは\(n\)が偶数か奇数かで決まるので、それぞれの場合にどうなるのか考えることでわかります。
\(n\)が偶数の時は\(n^3\)も\(7n\)も偶数なので、偶数-偶数+奇数=奇数だから奇数
\(n\)が奇数の時は\(n^3\)も\(7n\)も奇数なので、奇数-奇数+奇数=奇数だから奇数
ということで実は\(n\)がどんな整数でも\(n^3-7n+9\)が奇数になるので、除外できる\(n\)はありませんでした。
何も除外できなかったから意味ないやないかと思うかもしれませんが、これを考えられることは結構大事です。
なぜなら、この考え方を応用して先に進んでいけるからです。
すなわち、次は素数はほぼ3の倍数ではない、そん次は素数はほぼ5の倍数ではない、などと段々と考える倍数を変えていくことで手がかりが見つかるかもしれないからです。
素数の問題の80%以上はこれだけで解けます。実際2019年の京大理系数学の2番の素数に関する問題もこの方法で解くことが出来ます。
素数はほぼ3の倍数ではない
偶数つまり2の倍数ではないと考えた次は3の倍数ではないと考えるのが普通だ。
3の倍数について考えたい場合は、場合わけはあまりが0、1、2の時の3通りでいいので基本的に3の倍数かどうかくらいまでは考えるようにしましょう。
今回で言うと\(n^3-7n+9\)が3の倍数になるような\(n\)は除外することが出来るのです。(3になる時は除外しません)
では\(n\)を3で割ったあまりで場合分けしていきましょう。合同式を使うので合同式について知らない人は合同式の説明をした時の記事を先読んでください。
\(n\equiv0 (mod3)\)の時、\(n^3-7n+9\equiv0 (mod3)\)
\(n\equiv1 (mod3)\)の時、\(n^3-7n+9\equiv1-7+9\equiv3\equiv0 (mod3)\)
\(n\equiv2 (mod3)\)の時、\(n^3-7n+9\equiv8-14+9\equiv3\equiv0 (mod3)\)
以上より実は\(n\)がどんな整数の時も\(n^3-7n+9\)が3の倍数になることがわかりました。
ここまでくればほぼ解けたも同然です。\(n^3-7n+9\)が3の倍数なのに素数になると言うのはつまり\(n^3-7n+9=3\)ということです。
なのでこの3次方程式を解いて、
\(n^3-7n+9=3\)
\(n^3-7n+6=0\) (\(n\)に\(1\)を代入すると成り立つので)
\((n-1)(n^2+n-6)=0\)
ちなみにこの変形は\(n-1\)で割り切れることさえ分かれば暗算で出来ます。なぜなら、最高次の係数に注目することで\(n^2\)の係数が\(1\)はすぐわかるし、定数項に注目することで\(-6\)もすぐにわかります。残りの\(n\)の係数は筆算を頭の中で書くことで暗算で出来ます。
\((n-1)(n-2)(n+3)=0\)より\(n=1,2,-3\)となる。
これが解答でもちろん終わりなのですが、数学のテストでは1問の配点が高く、正解を書くってことがすごく大事です。
そのためにもミスをなくすっていうのがとても大事なので必ず確認作業をするようにしましょう。どうやるかというと
\(n=1,2,-3\)を\(n^3-7n+9\)に代入してみるのです。それで3になっていれば、確認になりますよね。この何十秒で出来る作業が高得点を取る上ではとても大切なのです。
数学満点の私が考えた手順
これは上級者向けかもしれませんが、私は\(n^3-7n+9\)が3の倍数だろうなってことを見た感じでわかります。
なぜなら\(n^3-n=(n-1)n(n+1)\)が連続3整数の積であることから6の倍数だと知っているからです。
つまり、\(n^3-7n+9=(n-1)n(n+1)-6n+9\)と変形することで、簡単に3の倍数だとわかるのです。
これを見てすぐ分かるためには経験が必要です。ちゃんと数学勉強してきた人なら、連続3整数の積が6の倍数だということは知っているでしょう。その基本問題で\(n^3-7n\)が6の倍数であることを証明する問題は必ず解いたことあるはずなのです。
このことを問題を見た時点ですぐに分かるようになればかなり上級者と言えるでしょう。
素数と聞いて考える手順まとめ
そうは言っても慣れないうちは決まった順番で考えられるようになるべきでしょう。
なので考える手順を書いておきます。
- 素数はほぼ奇数であること
- 素数はほぼ3の倍数であること
- (5、7・・・の倍数ではないなどと考えてもいいがほとんどない)
- 素数は2、3以外は6で割った余りが1か5
- 素数そのものの性質を使う
4までは分かると思いますが5は少し難しいですよね。ちなみに4までがちゃんと出来れば困らないので安心してもらって大丈夫です。
数学で他の人と差をつけたいと思う人のために、5についてどういうことか軽く説明します。
例えば\(a,b(a\leq b)\)を整数として\(p\)を素数として以下の式を見て欲しい。
\(a\times b=p^2\)
これを見たときに\(p\)が素数であればさらに変形できるなってことを分かるようになりましょう。
\(p^2\)を整数同士で分解しようと思うと何通りしかないのです。a\leq bより
\((a, b)=(1,p^2),(p, p),(-p^2, -1),(-p, -p)\)
の4通りになります。後半2つは忘れがちなので注意しましょう。
このように素数ならではの積の分解が出来るようになれば、素数については完璧です。
最後に素数は無限にある
これで最後なのでもう少しだけ頑張ってください。
素数についての考え方は既にマスターしたと思いますが、「素数が無限にあるってこと」も知っておいたほうがいいです。
そんなこと知っているよって言う人はその証明方法を知ってますか。
知らなかった人は証明方法を知っておくといいですよ。もちろん、そのままの問題が出題されることはおそらくありませんが、似た考え方を使う機会はしばしばあるからです。
ではその証明ですが、背理法を用います。
まず素数が有限であるとを仮定します。
有限と仮定することで最大の素数というものがあるはずなので、それを\(p_{max}\)とします。
そして全ての素数の積に1足した数を考えます。つまり
\(2\times 3\times 5\times \dots \times p_{max}+1\)
という数字を考えます。この数字はもちろんどんな素数で割っても1余ります。つまり素数では割り切れないということになります。どんな素数でも割り切れないということは、この数も素数となってしまうのです。
もちろんこの数字は\(p_{max}\)よりも大きいので、\(p_{max}\)が最大の素数であることに矛盾してしまいました。
以上で素数が無限にあることが証明されました。
まとめ
素数について知っといて欲しいことは以上です。これだけ理解していれば素数の問題は95%以上解けると思います。
今回は素数という話題で話しましたが、同じようにこういう問題ではこういうことを考えるべきみたいなのが決まっていることがあります。そういうテキストには載っていない考え方をこれからも配信していければなと思うのでツイッターのフォローをお願いします。